集落の未来を耕す。~第三者承継から始まる、持続可能な地域農業のかたち~ - あわら市観光協会

集落の未来を耕す。~第三者承継から始まる、持続可能な地域農業のかたち~

2026.08.17

「農業は家族が継ぐもの。」 そんな常識が変わりつつある今、全国で注目されているのが「第三者承継」という新しい就農のかたちです。 石川県から移住し、約10年前に福井県坂井市で農業を引き継いだグリーンファーム代表・齋藤さん。
地域の資産を生かしながら、お米や玉ねぎ、レンコンなどの栽培に取り組み、生産だけでなく地域づくりにも力を注いでいます。今回は、農業への想いや、あわら・坂井エリアの魅力、そしてこれからの挑戦について齋藤さんご夫婦にお話を伺いました。

津田 「一年を通してさまざまな苦労がある中で、『この仕事を選んで良かった』と心から実感するのは、どんな瞬間でしょうか。

齋藤さん
やっぱり収穫ですね。 春から毎日作物を見続けて、天気を気にして、病気にならないか心配して…。そんな時間を積み重ねてきた作物が無事に実り、「今年もいいものができた」と思える瞬間は何度経験してもうれしいです。 特に収量が増えたり、お客様から「おいしかった」と言っていただけると、「また頑張ろう」という気持ちになります。 「この野菜、おいしいね。」 その一言が、生産者の何よりの励みです。

津田 ご自身が育てた農産物が地域の料理人や旅館の料理として提供されることには、どのような価値を感じていますか。また、観光で訪れた方には、その一皿を通して何を感じてほしいですか?

齋藤さん
料理人の方は、本当に品質を見ています。その方々に選んでもらえることは、生産者として大きな自信になります。自分が育てた野菜やお米が、一皿の料理としてお客様に届けられる。 その料理を食べて「福井っておいしい」「また来たい」と思っていただけたら、生産者としてこれ以上うれしいことはありません。

あわら温泉女将の会さんとレンコン収穫

津田 品質を維持しながら安定した生産を続けるために、日々どのような視点や考え方を大切にされていますか?

齋藤さん
作物は言葉を話しません。だから毎日見ることが一番大切なんです。 葉の色が少し違う。 元気がない。 成長が早い。 毎日見ていると、小さな変化が分かるようになります。
経験だけではなく、土壌診断などのデータも活用しながら、その土地に合った栽培を心掛けています。

津田 生産者だからこそ実感する、この地域の自然環境や農業基盤の強みをどのように感じていますか?

齋藤さん
この地域は本当に環境がいいですね。 山から流れてくる冷たい水を使えることが、お米のおいしさにつながっています。 夜になると水温が下がるので、お米にしっかり養分が蓄えられる。さらに田んぼが集約されているので管理もしやすく、一枚一枚の田んぼを丁寧に見る時間が確保できます。 こうした環境は全国的に見ても恵まれていると思います。

津田 第三者承継という形で就農されたからこそ感じる、この地域だから実現できたことは何でしょうか?

齋藤さん
一番は基盤整備ですね。農地がまとまっていて、水もパイプラインで管理できる。 作業効率がとても高いんです。新しく農業を始める人にとっても、ゼロから何でもそろえる
農地や設備を引き継げる仕組みがあることは、大きな魅力だと思います。 第三者承継だからといって、一人で農業ができるわけではありません。地域の皆さんが受け入れてくださり、田んぼのことや土地のことを教えていただいたからこそ、今のグリーンファームがあります。農業は人とのつながりがあって初めて成り立つものだと感じています。地域に受け入れていただいた恩返しとして、私たちは地域のみなさんが活躍できる場所をつくりたいと思っています。
グリーンファームは「地域みんなの会社」でありたいと思っています。 85歳のベテランもいれば、若いスタッフもいます。重い仕事は若い人が担当し、高齢の方にはシール貼りなど得意な作業をお願いする。それぞれが役割を持つことで、地域に元気が生まれると思っています。

地域の方々との農作業

津田 農業だけでなく、SNSなどを通じた情報発信にも積極的に取り組まれています。発信を続ける理由や、その先に目指していることを教えてください。

齋藤さん
昔は『いいものを作れば自然に売れる』と思われていましたが、今はそれだけではなかなか伝わりません。 だからこそ、畑で何が起きているのか、どんな想いで育てているのかを発信することも、生産者の大切な仕事だと考えています。SNSを通じて県外の方や若い世代とのつながりが生まれ、実際に農場を訪ねてくださる方や、一緒に何かやりたいと言ってくださる方も増えました。 情報発信は『売るため』だけではなく、人と人をつなぎ、新しい挑戦や地域とのご縁を生み出すきっかけになっています。 情報発信を続けていたからこそ、新しい仕事や仲間との出会いが生まれました。これからも地域の魅力を発信することで、人と地域をつなぐ役割を担っていきたいと思っています。情報発信を続けていたからこそ、新しい仕事や仲間との出会いが生まれました。これからも地域の魅力を発信することで、人と地域をつなぐ役割を担っていきたいと思っています。

Farm to Table

津田  農業を体験する観光という視点で、現在取り組まれていることを教えてください。

 

津田  これからの地域農業を見据えたとき、グリーンファームとして次の世代へどのようなバトンを渡していきたいと考えていますか?

齋藤さん
空き家を活用したゲストハウスづくりや、お手伝いをしながら滞在する仕組みなども考えています。 農業を体験してもらい、この地域を好きになってもらえたらうれしいですね。 農業は一人では続けられません。人が集まり、地域がつながることが、これからの農業には大切だと思っています。 私たち自身が第三者承継でこの地域に受け入れていただいたからこそ、今度は私たちがその橋渡し役になりたいと思っています。 農業を始めたいという想いはあるけれど、一歩踏み出せない人、地域とのつながり方が分からないという方と、後継者を探している地域を結び付けるお手伝いも、今後は積極的に取り組んでいきたいですね 農地や機械だけを引き継ぐのではなく、人とのつながりや地域の文化も一緒に受け継いでいくことが、本当の意味での第三者承継だと思っています。

田園風景

おわりに 「この地に来て、本当に良かった。」 そう語る齋藤さんの言葉には、10年間積み重ねてきた挑戦と地域への感謝が込められていました。 農業は作物を育てるだけではありません。地域の人とつながり、風景を守り、次の世代へ受け継いでいく営みでもあります。豊かな自然と恵まれた農業基盤を持つあわら・坂井エリア。 農業の未来は、農地や技術だけでなく、人と人とのつながりによって受け継がれていくもの。第三者承継という新しい選択を自ら実践し、その経験を次の世代へつなごうとするグリーンファームの挑戦は、あわら・坂井エリアの農業に新たな可能性を示しています。これからも地域とともに歩みながら、その想いは未来へと受け継がれていくことでしょう。

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