― 認知度ゼロからのスタートー 駅前から、まちの未来を育てる — - あわら市観光協会

― 認知度ゼロからのスタートー 駅前から、まちの未来を育てる —

2026.03.05

— アフレアが描く、あわらの価値を高める物語-

福井県あわら市の玄関口、JR芦原温泉駅西口に広がるにぎわい交流施設アフレア。

来訪者と地元住民が交わる“まちのリビング”のような存在だ。列車の待ち時間を過ごす旅行者も、学校帰りに立ち寄る学生も、イベントに訪れる家族連れも——自然と同じ空間を共有する。

今回は、この駅前拠点の運営を担う施設長・笹井氏に、アフレアの役割と、あわらの魅力を高めるための取り組みについてお話を伺いました。

 

津田 まず、アフレアは、あわらにとってどのような存在だと考えていますか。あわらという場所におけるアフレアの役割をどうとらえられていますか。

笹井氏 この施設は「未来への施設」だと考えています。駅前のにぎわいをつくることが大きな役割ですが、それはあくまで手段です。

人が集まり、偶然の出会いが生まれ、「あわらっていい場所だな」と感じてもらえる。その体験が積み重なることで、まちへの愛着や誇りにつながる。そうした長い時間軸での価値づくりを目指しています。

開業当初は、正直に言えば認知度も低く、利用者も限られていました。しかし継続的にイベントや情報発信を重ねることで、少しずつ「駅前に行けば何かある」という認識が広がってきました。今ではあわら市民だけでなく、福井市や坂井市など県内各地からも来ていただいています。

駅前に“立ち寄る理由”が生まれたこと。それは、まちの未来にとって大きな一歩だと思っています。

津田 イベントも年間を通じて開催されていますが、イベントの運営で意識していることはありますか?

笹井氏 イベントは単なる集客施策ではありません。その日だけ人が集まって終わり、では意味がないと思っています。

例えば「子どもお仕事パーク」では、子どもたちが体験で得た専用通貨を市内約50店舗で使える仕組みにしました。すると商店の方々から「子どもが実際に買い物に来てくれる」と喜ばれました。

子どもにとっては社会体験になり、商店にとっては新しいお客様との出会いになる。アフレアを起点に、まち全体に経済と交流が広がっていく。そうした“循環”をつくることを常に意識しています。

継続しているイベントには、常連さんがついてきました。特に1月に開催した「餅のイベント」は、過去最高の1万8,000人が来場しまして。福井の方は本当にお餅が好きだと実感しました(笑)。

しかし、目指しているのは単なる“イベントの成功”ではない。イベントは“点”ではなく、“線”や“面”へ。それが私たちの考え方です。

施設の中だけで完結させない。まち全体を巻き込む設計が、アフレアの大きな特徴だと考えています。

津田 地域の方々との連携は大事ですよね。一方、新幹線開通で変わった人の流れや、滞在の可能性など、変化をどう感じていますか?

笹井氏 2024年の北陸新幹線敦賀延伸は、あわらにも確かな変化をもたらしました。

新幹線の待ち時間をアフレアで過ごす方が増えてきています。以前は改札前で旅館の送迎バスを待っていたのが、今では「アフレアホールで2時半に待ち合わせ」といった使い方が定着しています。

観光案内所ではお客様の手荷物一時預かりや、旅館への配送なども行っています。各宿泊施設の送迎担当の運転手さんにとっても、お客さんにとっても、旅での時間の使い方が広がり、両者から「使い勝手が良い」と言っていただいています。

関東や富山、石川からの来場者も増えました。一方で、関西方面からは車利用が依然として多いですが、全体として人の流れは確実に活発化しています。

単に人が増えたというよりも、「滞在時間」が生まれたことが大きいです。滞在時間があれば、飲食や買い物、情報収集につながる可能性が広がります。駅前が通過点ではなく、体験の入口になる。その役割を果たせるようになってきたと感じています。

駅前の“通過点”が“滞在拠点”へと変わりつつある。そう実感しています。

津田 新たな地域との関わり方などはどうですか?

笹井氏 地域の方々にも積極的に利用していただいています。例えば、近隣の学校では修学旅行の出発式が行われたり、保育園の園児たちが電車に乗って遊びに来たりすることもあります。さらに、施設の視察も増えており、当初想定していなかった使われ方が広がっています。

こうした状況を見ると、駅前施設が地域にとって身近で開かれた場として定着しつつあることを、とても嘥しく感じています。

津田 地域の居場所としての役割も広がっているようですね。こうした日常的な利用が定着する中で、施設としてどのような役割を担っていきたいとお考えですか?

笹井氏 地元の学生さんなどは、遠方よりお越しの来訪者の利用時間帯と重ならないため、学習利用も多く、放課後や試験前には多くの若い世代がこの場所で机を囲んでいます。地域の居場所として機能していることを、とても嘥しく感じています。

一方で、利用が増える中でマナーの課題が生じたこともあり、学校に改善をお願いしたこともありました。

開かれた空間だからこそ、自由であると同時に、利用する一人ひとりがルールを守り合うことが大切です。そうして初めて、賀わいと心地よい交流が両立します。ここで友人と過ごした時間や、受験勉強に励んだ日々が、やがて大人になったときの思い出の風景になるかもしれない。そして「久しぶりに帰ってきたら、やっぱりここに来たい」と思ってもらえる——そんな拠点になれたらと願っています。

この場所を「自分たちの空間」と感じてもらえるかどうか。それこそが、長く愛される施設になるための鍵だと思っています。

津田 学生さんもよく利用されているのをよく見かけますね。こうした日常的な利用も含めて、イベントだけでなく地域に根付く施設にしていくために、どのような工夫をされていますか?

笹井氏 大きなイベントだけでなく、職員による自主事業を増やし、日常的なにぎわいをつくっていきたいと思っています。

最近は貸館利用も増えていて、コンサートや学生の企画など、“映える”会場として認識され始めています。

職員が自ら進んでイベント運営などの手伝いに出向き、日常的なにぎわいへの糸口を学んでいます。また、施設開設当初より取り組んでいるライトアップは、毎月季節に応じて行っており、まだまだ知られていないので、さらに発信していきたいと思っています。

さらに、施設の二階「ふくいミュージアム」では、あわら市はもちろん、福井県内の観光地や施設、食や体験といった魅力を紹介し、あわらの地に来られた方が旅の参考にできるよう発信を続けていきたいと思っています。

「何かあるから行く場所」ではなく、「特別な用事がなくても立ち寄れる場所」にしたい。日常の中に自然に存在し続けることが、結果的にまちの価値を底上げすると考えています。

あわらの魅力をどう編集し、どう発信するか。アフレアは単なる施設ではない。あわらの魅力を編集し、届ける「発信基地」でもあると思っています。

津田 日常的なにぎわいを大切にされている中で、駅前を起点に、まちの魅力をより広く体験してもらう仕掛けや、今後さらに広げていきたい取り組みはありますか。

笹井氏 現在もアフレアではレンタサイクルの取扱いを行っています。駅前という立地もあり、新幹線で到着してそのまま自転車で観光に向かわれる方も少なくありません。

特に驚いているのは、ここから約10キロ以上離れた東尋坊まで向かわれる方が非常に多いことです。地元の私たちからすると「本当に自転車で行くの?」と最初は驚きました(笑)。ですが、電動アシスト付き自転車ですので、思った以上に快適に移動できるようで、「ちょうど良い距離でした」という声もいただいています。

また、タイヤの太いファットバイクも人気です。海沿いや少し舗装の荒い道でも安定して走れるため、景色を楽しみながらゆったり走りたい方に好評です。観光目的だけでなく、まちを自由に散策したい方や、写真を撮りながら巡る方など、用途もさまざまです。

利用者は季節を問わず年々増えており、春や秋だけでなく、冬場でもアクティブに楽しまれる方がいます。自転車だからこそ見える風景や立ち寄れる場所があり、それがあわらの魅力をより深く感じてもらう体験につながっているのだと思います。

今後は、旅館や三国港方面などでのワンウェイ利用も視野に入れ、より広域的に観光地をつなぐ仕組みづくりを進めていきたいと考えています。駅前を起点に、点在する魅力を線で結び、あわら全体の滞在価値を高めていければと思っています。

 

おわりに

駅前に人が集まり、子どもが商店で買い物をし、観光客が自転車で海へ向かう。その風景の中心には、静かに人と人をつなぐ場所がある。

アフレアの取り組みは、にぎわいを“つくる”というよりも、“育てる”営みに近い。イベントの成功や来場者数の増加だけでなく、地域との関係性をどう築くか。そこに運営の本質があるように感じた。

あわらの魅力を高めるために何ができるのか。その問いに向き合い続ける姿勢こそが、アフレアという施設の最大の価値なのかもしれない。

駅前の未来は、ここから始まっている。