誇りという灯りを守りながら——ひとさじの歴史のスパイスを添えて
2026.03.17
—地域の歴史や文化に触れながら、あわらの魅力を発見できる場所—
あわら市郷土歴史資料館。今回お話を伺った学芸員の九千房さんは、展示や収蔵庫の整理に携わる担当者で、歴史への熱量が尋常ではありません。話し出すと止まらず、古墳や狛犬、祭りの細かい背景まで次々に語る姿からは、本当に歴史が好きなんだという熱がバッキューンと伝わってきます。

津田 施設ができてからどれくらい経つのでしょうか?
九千房氏
平成25年7月に開館したので、今で13年目になります。私は開館後に採用されたので当時の詳細は直接聞いていませんが、総合的に地域の歴史を学んでもらうことが当初のコンセプトだったようです。 最近は照明やパネル、イラストなどを工夫して、来館者が理解しやすい展示を心がけています。
津田 この郷土歴史資料館が、あわらで果たす一番の役割は何だと思いますか?
九千房氏
一言で言うと、地元の人も来訪者も楽しめる場所です。もともとは地域の歴史を知ってもらうための場として始まりましたが、駅に近い立地を活かして、最近では観光的な魅力も大切にしています。
開館当初は地元向けの展示が中心でしたが、現在は観光的な要素も徐々に強化しています。例えば、地域の宝である縄文ピアス(玦状耳飾り)の専用展示場を設けたり、常設展示の本陣飾り物ではイラストや解説を増やし、初めて訪れる人でも理解しやすいよう工夫しています。さらに、歴史の背景を知ることで、単なる「見学」から「体験」に近い感覚を持ってもらえるようにしていく計画です。
スタッフの目標はシンプルです。「地元の人が自分の地域に誇りを持ち、来訪者が来てワクワクする場所にする」こと。それを実現するため、日々展示をブラッシュアップしています。

津田 あわら市で出土した縄文ピアス(玦状耳飾り)の専用展示場の話が出ましたが、その意義や感じている魅力を教えてください。
九千房氏
あわら市で見つかった縄文ピアス(玦状耳飾り)は、縄文時代の精神文化や美意識を今に伝える貴重な資料です。実物は小さく繊細で、当時の人々の技術力や装身具へのこだわりが感じられます。一方で、専門学術的な展示だけでは、その魅力が十分に伝わらないこともあります。
そこで、縄文人のイラスト風に、縄文ピアスを付けているように見せることで、形の特徴や使用イメージが視覚的に分かりやすくなり、子どもや歴史に詳しくない人にも親しみやすくなっています。また、縄文ピアスを付けているような写真を撮れるコーナーを設置しています。大人用も子供用もあるので、親子で縄文ピアスを装着したような写真が撮れます。
実物の持つ重みと、イラストによる想像の広がりが合わさることで、縄文人の暮らしや祈りに思いを巡らせるきっかけになる点に大きな意義があると感じます。
地域で出土した文化財を、現代の感覚に合わせて工夫しながら発信していくことは、郷土への誇りや学びを深める大切な取り組みだと思います。
津田 奥の方は収蔵庫になっていますか? オープン展示はあるのでしょうか?
九千房氏
もともとは整理作業や収蔵庫を見せるコンセプトでしたが、私が入った当時は整理が追いついておらず、公開できる状態ではありませんでした。現在は少しずつ整理を進め、希望があれば特定の資料を見せられる体制を整えています。
また、文化財の保存・活用についても、地域計画に沿った連携を行っています。地域の祭礼や古墳群の調査などと合わせて、地域全体で文化財を守りながら、来訪者にも紹介する取り組みをしています。
津田 資料館の一番の見どころや、ツウな楽しみ方を教えてください。
九千房氏
やっぱり「狛犬(こまいぬ)」ですね。福井県の特産であった笏谷石で造られた、いわゆる越前狛犬が、あわらには福井県で最も古いものとして2体あります。1体は沢の春日神社、もう1体は指中神社にありますが、指中神社の狛犬は小さくて可愛らしいのですが、盗難の危険があることや、皆に知ってもらうために、現在は資料館に寄託していただき展示しています。
狛犬は、神様を守るガーディアン的存在。古代オリエントから日本に伝わり、最初は天皇を守る目的で御所に置かれました。その後、地方の神社へ広まり、福井では特産の笏谷石を使った狛犬が全国に商品として出荷されたそうです。戦国時代から江戸時代にかけて数千体も作られたのですが、あわら市にはその中でも最古級があります。地元の誇りですねぇ~

津田 あわら市民のみんな知ってるのかなぁ~知ってほしいですね。展示を通して伝えたい「あわらの魅力」とは?
九千房氏
この地域独特の文化を知ってほしいですね。例えば、あわらには非常に多くの古墳があり、浄土真宗の蓮如上人との関わりから、地域に宗教文化が根付いています。食文化では、厚揚げや油揚げの消費が多いのですが、これは真宗由来の報恩講などの伝統行事に関係があると考えられます。
祭りも魅力です。金津まつりでは他地域にない、日用品を使用して作り上げた「本陣飾り物」が最大の特徴です。江戸時代のおもてなしの精神の流れです。湯かけまつりは温泉街で8月に行われ、明治・大正時代に宿の上からお湯をかけて無病息災を願ったのが起源なんじゃないかなって思っています。
地形も多様で、平地、川、湖、海、山、丘陵と揃っており、地区ごとの文化の違いを体感できます。その違いを知るだけで、旅がもっと面白くなりますよぉ
津田 歴史や文化を来訪者にどう活かしていくことができるのでしょうか?
九千房氏
旅のメインはあくまで美味しい食べ物やきれいな景色です。でも、そこに”ちょっとした歴史のスパイス”を加えると、旅がぐっと深く面白くなります。たとえば、あわらで厚揚げを楽しむなら、その背景にある浄土真宗の報恩講の話を添えるだけで、味わい方も変わりますよ。歴史を知ることで、「ただ食べる」ではなく、「この土地ならではの文化を体験している」という楽しみが生まれます。
歴史を幅広い人に楽しんでもらえるよう工夫しています。案内も、知識を”ちょっとパラパラとかける”感じで紹介するのが腕の見せどころだと思っています。

津田 今後の展望と地域への想いなど教えていただけますか?
九千房氏
展示ではイラストや説明文を工夫して、若い世代や観光客が楽しめるようにしています。Instagramで情報発信も強化中です。情報発信はもちろんですが、これからは応援サポーターを増やして、地域全体であわらの魅力を発信したいです。地元の人が胸を張って自分たちの街を紹介し、来訪者は歴史や文化を旅の”スパイス”として楽しんでもらう、そんな循環を作ることが目標です。
つまり、あわら市郷土歴史資料館は”地域の誇りを育てる場所”であり、訪れる人にあわら全体の価値を体感させる拠点にしていきたいです。
おわりに
あわら市郷土歴史資料館では、縄文ピアス(玦状耳飾り)、県内最古級の狛犬や金津まつりの本陣飾り物など、地元ならではの歴史文化を間近で体感できます。展示のひとつひとつに地域の人々の誇りや思いが込められていて、見るだけでなく「感じること」ができるのが魅力です。
そして、あわらの旅は歴史だけではありません。温泉街での湯かけまつりや地元の美味しい食べ物など、五感で楽しめる要素もたくさんあります。その中にちょっとした歴史のスパイスを添えると、旅がより深く、印象的なものになります。
地元の人たちが胸を張って語る自慢の文化を間近で見て、触れて、体験する。そんな時間は、あわらでしか味わえない特別な旅の思い出になります。
あわら市郷土歴史資料館は、歴史を知るだけでなく、地域の人と文化をつなぐ場所。ぜひ訪れて、あわらの魅力を自分の目で、肌で、心で感じてみてください。
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