バズってもブレない若旦那に聞く! SNSで注目の旅館「グランディア芳泉」から、“地域を巻き込むおもてなし”とは? - あわら市観光協会

バズってもブレない若旦那に聞く! SNSで注目の旅館「グランディア芳泉」から、“地域を巻き込むおもてなし”とは?

2025.08.21

福井・あわらの魅力を”おもてなし”の視点から発信するインタビューシリーズ。 第5回目は、SNSですごい人気の若旦那「老舗旅館のグランディア芳泉」の山口高澄氏

動画では笑顔を振りまきながら、旅館の魅力だけでなく、福井やあわらの魅力も発信。
けれどバズっても、若旦那はどこまでも “地域” と “現場” 目線。今回はそんな若旦那に、SNS を始めたきっかけから旅館経営、地域への想いまで、じっくりインタビューしました。

津田
SNS を始めた理由を教えてください。

山口氏
SNS は旅館の「枝葉」。でも、地域への思いは “根っこ”。
「旅館だけが盛り上がっても意味がない」「あわら全体が選ばれる場所になってほしい」
正直に言えば、SNS はあくまで “枝葉” だと思っています。きっかけは北陸新幹線の延伸。全国からお客様が来てくれるようになったものの、まだ「福井」や「あわら」のことを知らない方が多いと感じたんです。旅館の評価や認知度を上げるのももちろん大事。でも、それだけじゃダメで、旅館だけじゃなく、地域全体が魅力的に見えるようにしたい」
そう思ったんです。だから、あえて旅館の PR だけでなく、あわら市の風景や人、文化も一緒に発信しています。

津田
SNS での発信に加えて、宿泊古民家やカフェの運営、地域との関わり……と多忙な毎日。SNS にはご自身も出演されていますよね。普段の一日も気になります!

山口氏
朝 7 時ごろから「cafe だいな荘」に入り、メールチェックやその日の決裁事項を確認して各部署の状況を把握します。それから 9 時半ごろ旅館に入り、会議や打ち合わせがスタート。週 1 回は僕が議長を務める “改善と改革” の会議があって、現場から出た課題を徹底的に見直しています。
「“今がベスト” では満足できない。常に次のステップを考えていたい」
社長を含む役職者会議では旅館の未来の話も多いです。
「今どうするか」 だけでなく 「5 年後、10 年後、どうあるべきか」 をよく考えています。

津田
それだけ忙しくても SNS 発信を続ける理由とは?

山口氏
やっぱり「伝えたい想い」があるからです。SNS にはスタッフや若女将も出演していますが、出てもらうのは “想いを持っている人だけ”。中途半端にやると伝わらないし、お客様にも響かないと思うんです。だからこそ、熱量がある人たちと一緒に、動画も自分たちで考えています。
動画のスタイルはだいたい 3 パターン
1.窓口を広げる “キャッチーな動画”
2.じっくり魅力を伝える “ていねいな紹介動画”
3.視点を変えた “共感型動画”
SNS は、旅館があるからこそできること。 “地域に根ざした旅館” だからこそ、地域の魅力も一緒に発信できると思っています。

津田
SNS の反響は実感されていますか?

山口氏
はい、もうめちゃくちゃ感じています(笑)。ありがたいことに「動画を見て来ました」というお客様が、毎日 10 組以上お越しくださいます。「SNS で決めました」と言われると、やっぱりうれしいですよね。事前に伝えてくださったり、声をかけてもらえたときには、必ず「ありがとうございます」と直接お礼を伝えています。

津田
ご家族との時間は取れていますか?

山口氏
ちゃんと取れてはいますが、もっと大事にしていきたいとも思っています。ただ、べったり一緒にいるというよりは、“子どもが自分で考えて動ける” ようにサポートするのが自分のスタイルですね。

津田
従業員への働き方改革にも力を入れられていると聞きました。

山口氏
そうですね。旅館業界も価値観が多様化してきていて、「もっと働きたい」「もっと自分の時間がほしい」と、みんな違って当然なんですよね。だからこそ、会社側として「3 年目にはどんなスキルが身につくのか」などキャリアマップを明確にしてあげたい。将来像が見えると、働くモチベーションにもなります。AI で笑顔を測定したり、評価基準を数値化したり、努力が無駄にならないように制度を整えています。

津田
福井を離れていた時期もあったそうですね。戻ってきた理由は?

山口氏
はい。進学と就職で県外に出ましたが、外に出てこそ見えたものが大きかったです。「福井の魅力」「旅館の価値」は、離れてみて初めて実感しました。地元に戻ると決めたとき、「時間は無駄じゃなかった」と心から思えました。

津田
グランディア芳泉のこだわりは?

山口氏
お客様のニーズに合わせた客室、料理、空間づくりが一番のこだわりです。露天風呂付きのお部屋、ファミリー向けの客室、和洋折衷のコース料理やビュッフェ……まるで “豪華客船に乗ったような体験” をしていただけるよう、スタッフ一同で工夫しています。

津田
今後の展望について教えてください。

山口氏
僕が信じているのは、「旅館というのは日本の文化そのもの」だということ。おもてなし、四季、五感を通したサービス。これって、世界に通じる日本の誇りだと思うんです。そして旅館は “地域の総合力が集まった場所” でもあります。
•採用や育成
•デザインや建築
•地元の食材・料理
•人材教育
•サービスと接客
これら全部が旅館にある。だからこそ外に向けても発信できるし、地域と連携していけるんです。旅館が地域にできることは、想像以上にたくさんあります。来年度には「おもてなしが学べる学校」を開校予定です。地域の子どもたちが福井の文化に誇りを持って生きていける場所にしたいと思っています。

津田
最後に、若旦那として、地域で生きる人として伝えたいことは?

山口氏
議論も大事ですが、「じゃあ誰がやるの?」というフェーズに来ていると思うんです。旅館は本当にたくさんの力を持っています。だから、少しずつ外に開いていくことで、地域に貢献できることがもっとある。もちろん僕一人でできることではありませんが、「グランディア芳泉」が起点になって、福井やあわらに “また来たい!” と思ってもらえるよう、これからもチャレンジを続けていきます。

 

おわりに
グランディア芳泉の若旦那が SNS を始めたのは、旅館の宣伝が目的ではありませんでした。若旦那が発信するのは旅館の魅力にとどまらず、 “地域と生きるおもてなし” そのもの。
「お客様に “また来たい” と思ってもらえるのは旅館の力だけじゃない。“あわらっていい場所だったな” と思ってもらえたら成功なんです。」
まっすぐな言葉が頼もしく印象的でした。旅館の枠を超えて「あわらの未来を本気で考え、行動する」若旦那の信念と情熱から、これからも目が離せません!